深層レポート 日本の政治 (22)

悩める小泉首相の「テロ対策」舞台裏

執筆者: 2001年10月号
エリア: アジア

 米軍等への自衛隊の支援活動を可能にするテロ対策特別措置法案の審議が、衆院テロ対策特別委員会で始まった十月十一日午後十時前、この日の仕事を終え執務室から出てきた小泉純一郎首相は、取り囲んだ記者団から「同時多発テロ事件から一カ月ですが」とコメントを求められた。「もう一カ月か。時の経つのは早いね。毎日、毎日、このテロ。テロ、テロ、テロで悩んでいるなあ」 率直な、等身大の感想だった。毎日、テロで悩んでいる――。疲れを隠せない表情でそれだけ言うと、首相は口をつぐんだ。 実際、この一カ月間、首相は同時多発テロ事件への対応に追われ続けた。事態をどう捉え、どう対応するか。自分の一挙手一投足がそのまま日本の評価につながり、反応が瞬時に世界各地から跳ね返ってくる。就任五カ月余の新米首相は否応なく自らの立場を再認識し、その責任の重さに身震いする思いで過ごしてきたに違いない。

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