投資銀行化は「商社復活」の切り札か

執筆者:安西巧 2002年7月号
タグ: 日本

 食中毒から子会社の食肉偽装へと相次ぐ不祥事の発覚で企業存続の瀬戸際にある雪印乳業にとって、伊藤忠商事は頼みの綱だ。雪印の取引金融機関の筆頭である農林中央金庫は、再建の具体策を練り上げて関係先を説き伏せるようなメーンバンク機能に乏しい。「農林中金はわが社を“農協”にしようとしているのではないか」と雪印幹部が警戒を強めるなかで、伊藤忠は債務超過寸前の雪印に対する信用補完の役割を果たしてきた。 五月二十三日、雪印は取引金融機関による債権放棄や第三者割当増資を柱とする経営再建策を発表。伊藤忠は一〇%を出資する雪印の大株主となるほか、系列食品卸の雪印アクセスへの出資比率を一〇%から二五%に拡大して実質的に傘下に収める。このほか、他の食品メーカーが腰を引くなかでアサヒビールに雪印への出資を持ちかけるなど、フル回転で再建を支援した。「追いつめられた雪印の西紘平社長が相談相手として最も頼りにしていたのが伊藤忠の丹羽宇一郎社長」と関係者は指摘する。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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