特殊部隊の急襲を事前に通知されていた人たち

執筆者:春名幹男 2011年5月15日
タグ: CIA
エリア: 北米 アジア

 オバマ米政権は、オサマ・ビン・ラディンの隠れ家に対して行動を起こす計画について、米議会のいわゆる「8人組」(Gang of Eight)に通知していた。8人組とは、下院議長、下院民主党院内総務、上院両党院内総務、上下両院情報特別委員会正副委員長のことである。下院多数派は共和党なので、下院の共和党トップは議長、民主党トップは院内総務。上院多数派は民主党のため上院情報特別委の委員長は民主党、副委員長(ranking member)は共和党、下院情報特別委はその逆という形になる。
 8人の幹部は数カ月前から、アボッタバードの地名も含めビンラディンの居所についても、概略を伝えられていた。ベイナー下院議長が作戦成功後、成功を称賛したのも予定通りだったというわけだ。
 実は、米中央情報局(CIA)による秘密工作については、少なくともこの8人組への通知が法で義務付けられている。パネッタCIA長官は、米公共放送網(PBS)のニュース番組で、「これは『タイトル50』(米国法典50章)と呼ばれる工作で、米大統領が直接、実行を指示した秘密工作です」と言明している。工作そのものはCIA長官が司令官の役割を担い、統合特殊工作司令部のウィリアム・マクレーブン海軍中将が実行した。

カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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