アメリカ人にとっても、またイギリス人にとっても、「ウィンストン・チャーチル」の名前は偉大な戦争の勝利と直結しており、また「ファシズム」と「デモクラシー」の戦いにおいて後者に栄光をもたらした英雄として語られている。日本においてもチャーチルは、多くの政治家によって最も尊敬する指導者として語られる。また、リーダーシップの欠如が問われるときに、繰り返しその存在が想起される。
しかしながら、30年以上も前に河合秀和著『チャーチル』が中公新書から刊行されてからというもの、新たな信頼できるチャーチル伝が書かれていない。それにはいくつかの理由があるのだろうが、おそらく最も大きな理由はあまりにも多くの優れた評伝が英語で書かれていることであろう。チャーチルの人生に魅了され、新しい評伝を書きたいと願う者が、ひるみ戸惑うのも無理はない。

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