『古事記』編纂1300年の今年、各地で数々のイベントが開かれている。江戸時代の国学者たちが、「『古事記』神話こそ、日本人の心の故郷だ」と称え始めて以来、『古事記』は「神典」となって、人々に親しまれることとなった。
しかし、腑に落ちないことがある。神話に登場する神々の人気が低いのだ。それよりも、渡来系豪族・秦氏が祀っていた稲荷社や八幡社が、全国の神社の過半数を占めている。神話に登場する天照大神や天津彦彦火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)といった天皇家の祖神を祀る神社を数の上で圧倒している。ここに大きな謎が横たわる。『古事記』の神話は、本当に日本人の原風景なのだろうか。

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