堕ちゆく世界の迷走 (29)

「勝てば官軍」アベノミクスの3本の矢

執筆者:青柳尚志 2013年1月25日
エリア: アジア
 安倍首相(右端)と「城下の盟」を結んだ白川日銀総裁(左端)(c)時事
安倍首相(右端)と「城下の盟」を結んだ白川日銀総裁(左端)(c)時事

 人食い、鬼、虎、怪物、暴君……皇帝陛下。1815年、ウィーン会議の最中にエルバ島から脱出し、パリに入城したナポレオンに対する当時のフランスの新聞による呼称の変遷である。安倍晋三首相の唱えるデフレ脱却策を当初、冷ややかにみていたエコノミストたちが、微妙に評価を変え始めた。勝てば官軍(Might is right.)ということだろうか。

 金融緩和、積極財政、成長戦略を3本の矢とする安倍氏の経済政策の力点は、前二者の金融・財政政策にある。1990年代のバブル崩壊後、何度も繰り返されてきた浦島太郎の政策だと皮肉る向きもあるが、今回は錦の御旗を掲げているようにみえる。円安と株高であり、経営者や投資家の心理の好転である。要するに世の中の雰囲気が明るくなったのだ。

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