ロンドンまではおよそ十三時間の旅だ。日本海を越え、シベリア上空の雲海を突き抜けると、一面雪で覆われたロシア連邦の大地が眼に飛び込んでくる。ロシア上空の長いフライトがようやく終わると、パイロットはバルト海から北海へと操縦桿を切る。ドーヴァー海峡のやや北方に流れ込むテムズ川の河口から上流へと遡るにしたがって、飛行機の高度が徐々に下がっていく。 日本からのフライトは、ロンドンの中心部を横切ってヒースロー空港へ到着するため、天気がよければロンドン市内が絵葉書のようにくっきりと見える。下流から上流へ向かい、造船所、グリニッジ天文台、ロンドン塔、セントポール寺院、金融街シティの卵型ビル、ビッグベンと英国議会、都市型庭園ハイドパーク、バッキンガム宮殿などが、手に取るように見えるのだ。

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