天竜川上流の長野県辰野町。中央アルプスと南アルプスに囲まれ、総面積の八五%が森林で、六月中旬のこの時期に乱舞する蛍が最大の観光資源という山あいの町で六月十一日、きな臭い政局絡みの発言が飛び出した。「小泉は退路を断って、この法案は妥協しない。通らなければ廃案で構わない。すなわち解散があると私は勝手に感じ取っている」 発言の主は同町出身の飯島勲首相秘書官だった。町村合併五十周年を祝う記念式典の来賓として招かれた飯島氏は祝辞もそこそこに、黒衣役を一時返上し、小泉純一郎首相の胸の内を縦横に語った。「勝手に感じ取っている」という言い方だったが、三十年以上、首相に身近で仕え、心のひだまで知り尽くしている飯島氏の言だ。自民党の山崎拓元幹事長や中川秀直国対委員長の同趣旨の発言とは一味違う生々しさと重みがあった。
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