「江沢民国際手配」スペイン司法当局の意図は何か

執筆者:国末憲人 2013年11月21日
エリア: ヨーロッパ アジア

 自国とは異なる国で起きた犯罪をあえて訴追する「普遍的管轄権」を、以前フォーサイトで紹介したことがある(2013年10月21日「国家に縛られず犯罪を裁く『普遍的管轄権』とは――マドリードを訪ねて」)。

 通常の裁判管轄権は国境に縛られるが、国際秩序を揺るがす恐れのあるジェノサイド(大虐殺)や「人道に対する罪」の場合、独裁者や国家機関が罪を免れないためにも、当事国以外の国が罪を問える、との考え方である。1990年代後半から2000年代にかけてスペインの予審判事バルタサル・ガルソン氏がこの制度を利用し、チリの独裁者ピノチェト元大統領やアルゼンチンの独裁政権幹部を次々と訴追して、大きな反響を呼んだ。

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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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