交渉の停滞によるものなのであろうが、最近日本では環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific Partnership: TPP)をめぐる議論はやや下火のようである。この問題をめぐっては、日本ほどではないにしても、米国内でも賛成、反対双方から様々な主張が展開されてきた。
「経済連携協定」というと、自由貿易協定のようなイメージから、19世紀にリカードが提起した比較優位のモデルを引き合いにしながら、貿易の果実をどのように各国が享受できるようにするかということが焦点であるように考えられてきた。もちろん、多国間の貿易を促進して各国経済の成長に結びつけるという意味では、TPP を経済問題として論じるのはあながち間違いではないのであるが、筆者は、各国の国内政治事情を考慮に入れなければ、この問題の本質は何も見えてこないと考えている。そこで、TPP をめぐる米国の国内政治事情を考えてみたい。

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