南仏の公演のあいだに、かねてから行きたかったアルルの町を訪れてみた。アルルといえば、まずアルフォンス・ドーデ作の「風車小屋だより」の「アルルの女」が浮かぶ。 主人公フレデリは、二十歳になる村の旧家の長男で、一本気な青年。ある日、アルルの闘牛場で息をのむような美女を見かけ恋に落ちた彼は、あの女と結婚できないなら、いっそ死にたいとまで思いつめ、日に日に衰弱していく。母は心配のあまり、結婚を許そうと思うが、遊びなれたアルルの女には情夫がいた。かねてから息子に想いを寄せる純朴な村娘に、母は彼を慰めるように頼み、フレデリは家族に心配をかけまいと、村娘との結婚を決意する。町が守護聖人のお祭りに沸き返る中、結婚式を目前にしたフレデリは、アルルの女が情夫と駆け落ちすると聞き、嫉妬に狂って、高い窓から身を投げてしまう。
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