クオ・ヴァディス きみはどこへいくのか?

女性の胸元を飾るビルマ軍政の利権

執筆者:徳岡孝夫 2007年12月号
エリア: アジア

 明治三十一年に横浜・山手の居留地に生まれ、八十三歳でニューヨークに死んだポール・C・ブルーム翁の、私は晩年の友の一人だった。彼のことを書き出せば長くなる。東京・青山に隠棲していた蒐書家で、その外国人による幕末・維新期の日本関係書五千冊は、横浜開港資料館に譲られ、同館の基本図書になったとだけ記しておく。 話は、ブルーム翁の少年時代のことである。両親はパーティに出かけて遅く帰宅した。翌朝に日本人阿媽に片付けさせるつもりで、翁の母はドレスは脱いだまま、身に付けた宝石類もすべて食堂のダイニングテーブル上に並べたままにして寝た。そしてその夜、泥棒が入った。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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