「保育に欠ける」という言葉をきいて、すぐにその意味と由来がわかる人は、かなりの「保育通」といえよう。たいていの人は、首をかしげるに違いない。 一九四七年にできた児童福祉法には「保育に欠ける」家族に保育を提供するのが自治体の役割だと書いてある。保育に欠ける家族とは、終戦後間もない当時、子どもを残したまま父親が戦死した家族を意味した。「欠ける」という言葉の痛ましさには、当時の社会的な背景がある。 その後、六十年が経ち、時代は大きく変貌した。にもかかわらず、依然として児童福祉法施行令の文言は変わっていない。相変わらず、行政が「保育に欠ける」家族を認定し、提供するという仕組みのままだ。「保育に欠ける」具体的な状況とは、

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