饗宴外交の舞台裏 (127)

胡錦濤訪日をもてなした「最高のワイン」の含意

執筆者:西川恵 2008年8月号
エリア: 北米 アジア

 外国の国賓が来日すると、天皇、皇后両陛下は歓迎の宮中晩餐会を催す。この晩餐会のルールは「どの国に対しても最高レベルでもてなす」ことである。したがって飲物一つを見ても、アフリカの国であろうと、米国であろうと、最高格付けのフランス産ワインが出される。 つまり国の大小、日本との関係の遠近によって差別をつけない。これは皇室が「政治」と切り離された存在であることと無関係ではないだろう。 一方、首相官邸で持たれる饗宴には「政治」が反映する。その国と日本の関係、首脳同士の親近感、またどのような関係を持とうとしているかで饗宴内容、特にワインが違ってくる。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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