グルジアを弄ぶロシア・ハンド

執筆者:名越健郎 2008年11月号
エリア: ヨーロッパ

 8月8日の北京五輪開会式と並行して始まったロシアとグルジアの戦争はロシアの勝利に終わり、メドベージェフ大統領はグルジア領南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認すると宣言した。兵力で圧倒的優位に立つロシア軍は、スターリンの故郷ゴリを蹂躙したほか、グルジアの17カ所を空爆。グルジア軍は敗走した。 戦時愛国主義が燃え上がるロシアのネットブログは先制攻撃したサーカシビリ・グルジア大統領を「ブッシュのプードル」「ヒトラー」などと糾弾。「強いロシア」を賛美し、欧米従属や経済危機に打ちひしがれた1990年代の屈辱を一気に晴らそうとしているかにみえる。狂気の大ロシア主義の中で、健全な精神はアネクドートの世界だけに残っている。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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