三月の第一週で、ギリシャ国債の第一段の借り換えはとりあえず成功を収めた。超緊縮財政の実施というギリシャ政府の発表に対して、市場は敬意を表して、次の展開を見守る姿勢をとったといえるだろう。しかしギリシャ政府は二〇一〇年から一一年にかけて、相次いで借り換え債の発行を迫られる。政府は自らのガバナンスの欠陥を封じ込めることができるのかが問われる。そしてこうした脆弱性を抱えた国家をメンバーとした共通通貨ユーロが売られ続けることはほぼ確実な情勢だ。
それは市場においてガバナンスの有効性のスキをつくことを職業上の任務とした専門家が狙いを定めているからだ。加盟国の一員に対して、ガバナンスの強制ができるのかが具体的に問われる中で、いわばEU(欧州連合)の盟主の立場にあるはずのドイツとても責任を負えるわけではないと自らをみなしているのだ。そこで登場したのが加盟国向けの欧州版IMF(国際通貨基金)構想である。これで時間稼ぎをしながら、主権国家ギリシャの財政規律の回復を待とうというのだ。

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