オルヴァル、ロシュフォール10、シメイ・ブルー……。有名なチーズの銘柄ではないかと錯覚しそうな名前だが、これらはすべてベルギーを代表するビールの銘柄である。それもカトリック教会のトラピスト修道会が、自前のトラピスト醸造所で生産したビールだ。世界中に7つのトラピスト醸造所があるそうで、その内、なんと6つの醸造所がベルギーに集中していると聞く。フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガルはワインの産地として有名だが、レストランではベルギー・ワインについぞお目にかかったことがない。
それもその筈で、残念ながらベルギーの気象条件では、ワインに適した良質のブドウを栽培できないという悲しい現実がある。このため止む無く穀物を使ったビール醸造に、やや大げさに表現すれば、国民一丸となって精を出さざるをえなかった。これらの銘柄以外にも、デュベル、ヒューガルデン・ホワイト、ドゥシャス・デ・ブルゴーニュなどが、ビール通には人気らしい。

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