80時間世界一周 (72)

ベルギーとイギリスの「秘密の関係」

執筆者:竹田いさみ 2010年12月27日
エリア: ヨーロッパ

 オルヴァル、ロシュフォール10、シメイ・ブルー……。有名なチーズの銘柄ではないかと錯覚しそうな名前だが、これらはすべてベルギーを代表するビールの銘柄である。それもカトリック教会のトラピスト修道会が、自前のトラピスト醸造所で生産したビールだ。世界中に7つのトラピスト醸造所があるそうで、その内、なんと6つの醸造所がベルギーに集中していると聞く。フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガルはワインの産地として有名だが、レストランではベルギー・ワインについぞお目にかかったことがない。
 それもその筈で、残念ながらベルギーの気象条件では、ワインに適した良質のブドウを栽培できないという悲しい現実がある。このため止む無く穀物を使ったビール醸造に、やや大げさに表現すれば、国民一丸となって精を出さざるをえなかった。これらの銘柄以外にも、デュベル、ヒューガルデン・ホワイト、ドゥシャス・デ・ブルゴーニュなどが、ビール通には人気らしい。

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執筆者プロフィール
竹田いさみ(たけだいさみ) 獨協大学外国語学部教授。1952年生れ。上智大学大学院国際関係論専攻修了。シドニー大学・ロンドン大学留学。Ph.D.(国際政治史)取得。著書に『移民・難民・援助の政治学』(勁草書房、アジア・太平洋賞受賞)、『物語 オーストラリアの歴史』(中公新書)、『国際テロネットワーク』(講談社現代新書)、『世界史をつくった海賊』(ちくま新書)、『世界を動かす海賊』(ちくま新書)など。
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