人工衛星の活用やセンサーの導入で生産性を向上させる「精密農法」が、日本でも本格化
世界の食料生産現場で、情報技術(IT)をフル活用した生産改革が進んでいる。人工衛星やパソコン、センサーなどの各種情報機器を利用したIT農法が、最適な環境を人為的に設定することを通じて生産性の大幅な向上を実現しつつあるからだ。天候の変化や土壌の特質といった要因に経営を大きく左右されてきた農業生産の現場は、“農業IT革命”ともいうべき変革期を迎えつつある。
衛星を使ったGPS(測位衛星システム)で農場を数十―数百ヘクタール規模で区画管理し、細分化した区画ごとに最適な肥料、農薬を散布。最小限のコストで最大限の収穫を得る――。米国では、競争原理を取り入れた新農業法が施行された九六年以降、GPSを利用した「精密農法」(プレシジョン・ファーミング)の導入が大規模生産者を中心に加速し始めた。米国の代表的な農産物であるトウモロコシでは、現在、生産面積の二〇%強の農地が精密農法を導入している。九七年には全米研究協議会が「二十一世紀の精密農法」と題するレポートを連邦政府に提出しており、今年制定される二〇〇〇年農業法には、精密農法の一層の推進が盛り込まれる可能性も高い。

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