三億か五億か知らないが、一室長の外交機密費流用くらいでオタオタするな。いまを去ること六十年、アメリカと戦争を始めようかという前の晩、仲間同士で飲み食いして翌日の指定時刻に宣戦布告文を渡せず、真珠湾攻撃の一時間後に持っていき、日本国のツラに永遠に泥を塗った。外務省とはそういう役所だ。日本人は死んでも忘れるな。 東京の外務省は海軍と詰めて時刻表を作り、攻撃開始の直前、一九四一年十二月七日(日)午後一時に宣戦布告の覚書を米側に手交することにした。長い覚書を十四部に分け、六日午後からワシントンの日本大使館に向けて打電し始めた。それに先立ち、覚書の取り扱いに関する訓令を送った。

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