四十歳を過ぎてから、来るべき老後に備えていろいろなものを備蓄している。これは、仕事が一段落し、家族からも疎んじられた場合に備えての「濡れ落ち葉保険」だ。備蓄品とはカメラ、書籍、レコードなど。あと三十年も経てば銀塩フィルムカメラも骨董品になる。孫に自慢ができるはずだ。読まずにとってある数千冊の書籍は、若かりしころの社会・風俗を日がな一日懐かしむのに役に立つだろう。 レコードはおもに五〇―六〇年代のジャズ。一年前から集め始めたのだが、すでに四百枚近くに達している。しかし、どんなレコードがあるのかと聞かれると答えに窮する。マイルス・デイビスやコルトレーンなどのいくつかのタイトルは覚えているが、八割のレコードははじめて聞くものばかりだ。

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