国際論壇レビュー

ユーロ導入=Eデイは欧州統合をどう進めるか

 年末から新年にかけては、過去一年を振り返り、新たな年への展望を考えるのが通例である。二〇〇二年の新年にあたっては、過去一年の世界を振り返って、九月十一日のアメリカへのテロ攻撃を思い浮かべない者はない。しかし、新たな年の展望についてはどうか。それほど一致した見方はないかもしれないが、やはり目についたのはユーロであった。本年最初の国際論壇レビューもユーロをめぐる議論から振り返ってみることにしよう。     * 帳簿上はユーロは一九九九年から使われており、その意味で何も新しいことではない。しかし、やはりユーロという紙幣とコインが出回るということのシンボリックな意味を軽視できないであろう。これまで千リラ札を小銭として日常的に使っていたイタリア人たちが、小銭としてはコインを使うようになる。もう大量にお札を持ち歩くイタリア人を見ることはなくなるのかもしれない。千リラはユーロでは五十二セントにしかならないからである(日本円では六十円前後)。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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