「本当は自由に人と話したかった」。九月四日の辞任会見で三井物産社長の清水愼次郎が目を潤ませながら語ったこの一言が、その人柄と器量を最もよく表していた。 大企業の社長が慎重かつ冷静な発言を求められるのは当然であり、そうした様々な制約を踏まえた上で、トップとしての意向や理念を社内外に発信していくことが、現代の経営者の重要な資質のはず。証券アナリストへの決算説明会に社長自ら出席するのが珍しくもない昨今、ましてや「グローバル企業」として自他ともに認める代表銘柄だった物産の社長がこんな泣き言を吐くとは、意外感を通り越して呆れるほかない。

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