国際論壇レビュー

小泉訪朝で生まれた「期待」と「懸念」

執筆者:田中明彦 2002年11月号
エリア: アジア

 この一カ月、日本で外交といえば、北朝鮮との関係のことであった。金正日が認めた拉致の事実とその悲惨な結末は、あまりに衝撃的であり、この問題の解明なしに日朝交渉を進めることは困難な状況になった。他方、日本における世論調査は、小泉首相の訪朝の意義については高い評価を与えた。北朝鮮の拉致(そしてこの問題の処理をめぐる外務省の不手際)に対して多くの国民は、非難の声をあげたが、北朝鮮訪問という小泉首相の決断は支持されたといえよう。高まる「日米韓」協調の重要性 国外の評価も各国政府のものはおおむね好意的なものが多かった。また、メディアにも高い評価が多かった。『ニューヨーク・タイムズ』紙社説は、「何十年にもわたる敵である日本に対して和解の試みを始めることで、北朝鮮は自らの孤立を緩和する重要な一歩を踏み出した」と北朝鮮の変化に着目した(“A North Korean opening”『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン(IHT)』、九月二十五日)。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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