国際論壇レビュー

アメリカが迫られる「三つの脅威」への対応

執筆者:田中明彦 2003年2月号

 イラクでの査察が開始され、大量の申告書が国連に運び込まれた。その結果、イラク情勢は今のところ、書類の精査と今後の査察の成り行きに注目せざるをえないという局面が続いている。依然として、イラクに対する戦争の現実味が突然高まることはありうる。 このような中、北朝鮮は、十二月号で懸念したような危険な瀬戸際戦略への道を歩み始めた。枠組み合意に基づく重油の提供が見込めない中、寧辺の核施設を再稼働させると通知、IAEA(国際原子力機関)による封印や監視カメラを撤去し、査察官を追放した。昨年末から年始にかけての国際論壇の多くは、このような北朝鮮問題に関心が集中した。テロとの戦争を続けるなかで、イラクと北朝鮮という二つの重大問題に直面した世界は、近年になく複雑さに取り囲まれた新年となった。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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