東電経営陣「居座り」の危険性

執筆者:杜耕次 2011年4月25日
タグ: 原発 日本
エリア: アジア
4月17日、記者会見で報道陣の質問に答える勝俣恒久会長 (C)時事
4月17日、記者会見で報道陣の質問に答える勝俣恒久会長 (C)時事

 東京電力は実質的に経営破綻状態にある。この客観的事実を認識できない、というよりも敢えて目をそむける人々が、福島第1原子力発電所の事故が引き起こした社会的、経済的な混乱を一段と助長している。同原発の4つの原子炉はいまだ予断を許さない状況下にあり、避難を余儀なくされている周辺住民だけでなく、地震・津波の被災地である宮城県南部や遠く関東1都6県の住民までもが不安に苛まれる日々を送っている。  懸念すべきは当事者である東電のガバナンスだ。「レベル7」の重大事故を招いた経営陣への信頼は地に堕ちて当然だが、事故発生後に体調不良を訴え1カ月近く衆人の前に姿を現さなかった社長の清水正孝(66)や原子力部門のトップでありながら福島の現場から早々に東京に引き返した副社長の武藤栄(60)を含め、東電経営陣は誰1人解任されず現在もその職に留まっている。  福島原発事故の賠償の対象や範囲について指針を定める政府の「原子力損害賠償紛争審査会」(会長・能見善久学習院大学教授)が、4月22日に開いた第2回会合で1次指針の原案が示された。それによると、半径20キロ圏内では住民(約8万人)の「避難費用」をはじめ、農水産物・家畜・工場・各種サービスの「営業損害」、身体障害を伴わない「精神的苦痛」、放射性物質の汚染を取り除くことなどによる「資産価値の喪失・減少」などが盛り込まれ、約14万人の住民がいる半径30キロ圏内でも操業困難による減収分や航路迂回による費用増加分などが補償の対象とされた。

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