台湾総統選「双英対決」の微妙な争点

執筆者:野嶋剛 2011年6月21日
タグ: 中国 台湾 香港
エリア: アジア
野党民進党の蔡英文主席の戦略は?(C)時事
野党民進党の蔡英文主席の戦略は?(C)時事

 4年に1度、台湾全土がお祭り騒ぎになる台湾総統選挙が半年後に迫っている。国民党の現職・馬英九総統に挑むのは、民進党のニューリーダー、蔡英文党主席。2人の名前にはくしくも共に「英」の文字が入る。この「英」は一族の世代間で共有される輩行字にあたり、中華世界では重要な意味を持つ。メディアは「双英対決(ダブル英の戦い)」と今回の総統選を命名した。 「双英対決」の命名には単なる名前の問題だけではなく、2人の共通点に対する世間の暗喩も込められている。  馬英九と蔡英文は台湾の戦後教育において、それぞれの名前通りの「俊英」、つまり超エリートとして育てられてきた。そして、性格、経歴、リーダーシップの手法など多くの面で2人はよく似ている。その意味で、今回の総統選は「ダブル英」による「似たもの同士の戦い」と位置づけられているのだ。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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