米国の官公庁の記者用メーリングリストに登録している筆者のもとには、毎日膨大な数のメールが届く。このうち国防総省から届くメールには、アフガニスタンでの米兵の戦死を伝えるメールが含まれている。どの部隊に所属する兵士がいつ、アフガンのどの地方で亡くなったかが書かれている。年齢を見ると、当然のことながら20代の若者が多い。痛ましいと言うほかない。
個々の若者の死が把握され、公式記録として残される米国とは対照的に、米軍が軍事作戦を遂行している国の地元の人々の死は、多くの場合、記録には残らない。イラク、アフガンで亡くなった人の数は「推計」である。ましてや、まともな統計なるものが存在しないアフリカの最貧国の戦争犠牲者の数など永遠に「推計」でしかない。いや、時には犠牲者数そのものが、非情な国際政治の力学によって左右されている。

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