タイのシリントーン王女が、またまた訪中した。彼女の訪中は1980年代初頭の初訪中以来、すでに30回を超え、訪問先は中国全土に及んでいる。平均して1週間前後の日程だが、語学研修のために北京に1カ月以上滞在したこともある。おそらく世界中の王族の中で彼女ほどの訪中歴を持つ者はいないだろう。さほどまでに彼女が中国に“入れ込む”のは何のためか。単なる儀礼だけでは済まされないだろう。
4月5日、彼女を北京の釣魚台国賓館に迎えたのは、薄熙来の失脚が明らかとなって以来、権力闘争で旗色の悪い習近平副主席だった。胡錦濤主席、温家宝首相、李克強副首相――胡錦濤派(団派)の3首脳の派手な外交攻勢に較べて地味ではあるが、単なる外交儀礼的な日程消化ではなさそうだ。

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