民主主義を疑ったメンケンのジャーナリズム

執筆者:会田弘継 2006年1月号
エリア: 北米

 アメリカのジャーナリズムはどうなってしまったのだろうか。そう考え込まされるような出来事がこのところ相次いでいる。 核や生物・化学兵器の拡散問題に詳しいニューヨーク・タイムズの花形女性記者ジュディス・ミラーが、ブッシュ政権高官らによる対イラク開戦ムードづくりの世論操作に利用されていた疑いが強まり、十一月事実上の退職勧告を受けて辞職した。 ミラー記者は、ホワイトハウス高官(既に辞任)が中央情報局(CIA)女性工作員の名前を違法に外部に漏らしたとされる事件で、名前を耳打ちされた一人だった。捜査当局の取り調べに「ニュースの出元は絶対明かさない」という原則を収監されても守り抜き、ついこの間までは「報道の自由」を守ったヒロインとして持ち上げられていた。世は有為転変だ。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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