クアシ兄弟のうちフランス・シャンパーニュ地方ランスに住む兄サイード・クアシは、相変わらず定職を見つけられないでいた。移民家庭の出身であること、学歴にも技術にも乏しいこと、イスラム原理主義に固執した生活スタイルに加え、視力が弱いことも、就職の障害となっていた。することがなく、1日中ゲームで時間をつぶすこともあった。妻のスミヤ・ブアルファも持病を抱え、働きに出られなかった。しかし、一家が暮らす低所得者向けアパルトマンで、そのような境遇は特に珍しいわけでもなかった。
1月7日、サイードはよく眠れぬまま朝を迎えた。興奮していたわけではない。前日の6日、一家そろって食中毒に見舞われたからだ。

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