インテリジェンス・ナウ

「ケネディ暗殺」と「カストロ暗殺計画」の点と線:CIA機密文書

執筆者:春名幹男 2015年12月16日
タグ: CIA ロシア 日本

 1963年11月22日、テキサス州ダラスで暗殺されたケネディ米大統領。事件直後、米中央情報局(CIA)が疑ったのは「外国の陰謀」、恐らく「米国を不安定化させる共産主義者の工作」の可能性だった。特にソ連による陰謀の疑いがあるとして、ソ連情報工作員らの「動向を監視するよう」世界中のCIA支局などに指示を出していたことが公開された機密文書から分かった。
 しかし暗殺事件直後、フルシチョフ・ソ連共産党第1書記の所在をCIAは突き止められず、第1書記は「米国の報復を恐れて身を隠したか、対米攻撃準備か」と、24~48時間にわたって「緊張が高まった」という。
 この文書は、「ジョン・マッコーンCIA長官とケネディ大統領暗殺」と題するデービッド・ロバージCIA歴史室長作のレポート。暗殺50周年を機に、CIA部内誌「情報研究」2013年9月号に掲載され、1年後の翌2014年9月に機密解除されていた。ケネディ暗殺後、CIAがどう対応したかを包括的に記した、初の内部報告である。
 事件後、特に単独犯とされたリー・ハーベイ・オズワルドが警察署内を移動中暗殺された後、米国では「暗殺陰謀論」が噴出。2013年当時の世論調査でも、米国民の71%がなお「陰謀」を信じる状況が続いている。
 実は、「ソ連陰謀説」の裏では、当時CIAが公表できない、機密度が高い「秘密工作」が進行中だった。キューバのカストロ首相暗殺計画である。

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執筆者プロフィール
春名幹男(はるなみきお) 1946年京都市生れ。国際アナリスト、NPO法人インテリジェンス研究所理事。大阪外国語大学(現大阪大学)ドイツ語学科卒。共同通信社に入社し、大阪社会部、本社外信部、ニューヨーク支局、ワシントン支局を経て93年ワシントン支局長。2004年特別編集委員。07年退社。名古屋大学大学院教授、早稲田大学客員教授を歴任。95年ボーン・上田記念国際記者賞、04年日本記者クラブ賞受賞。著書に『核地政学入門』(日刊工業新聞社)、『ヒバクシャ・イン・USA』(岩波新書)、『スクリュー音が消えた』(新潮社)、『秘密のファイル』(新潮文庫)、『米中冷戦と日本』(PHP)、『仮面の日米同盟』(文春新書)などがある。
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