フォーサイト編集部です。新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。本年は新年を迎えるに当たり、執筆者の方々に「2016年の注目点、気になること」をお聞きし、それを【地域編】と【テーマ編】にまとめてみました。こちらは【テーマ編】です。お楽しみください(順不同。タイトルをクリックすると、それぞれの執筆者の記事一覧ページへジャンプします)。

 

【東北・寺島英弥】東日本大震災の「風化」が加速する

 2016年は、3月11日で東日本大震災から丸5年を迎えるが、被災地で「復興」を口にする人はいない。福島の原発事故被災地に政府は17年3月までの避難指示解除の方針を打ち出したが、除染は途上で放射線量は十分に下がらず、汚染土を集約する中間貯蔵施設の用地も未確保で、避難中の住民は膨大なフレコンバッグの山と放射能の不安、生業再生を阻む風評を前にして帰還の判断に逡巡している。北の津波被災地では、新しい街づくりの土台となる地盤のかさ上げ工事がいまも続いており、あまりに長い待ち時間の間に人口流出は進み、岩手県では沿岸に戻る意向の避難者が2割を切った。やはり風評の影響で水産業は市場を回復できず、コメの値も暴落し、復興を支える産業は空洞化している。「復興五輪」を掲げた2020年東京五輪は、エンブレム、新国立競技場の白紙撤回をはじめ巨額の費用や、「復興」を謳って震災と原発事故に幕引きしたい政府の姿勢に東北の人々は冷め、1964年の東京五輪前後の建設ブームが生んだ「出稼ぎ」再現すら危惧する。国民の関心も移り、震災の風化が加速するのではないか。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top