北朝鮮「水爆実験」の衝撃(下)党「軍需工業部」謎の人事

執筆者:平井久志 2016年1月17日
エリア: アジア

北朝鮮の提案

 北朝鮮でまったく核実験の兆候がなかったわけではない。昨年1月10日、朝鮮中央通信は、北朝鮮が同9日に、米軍と韓国軍が今年の合同軍事演習を中止した場合、核実験を「臨時中止する用意がある」との提案を伝達したと報じた。米政府当局者はこの提案に対し「米韓演習と核実験を不適切に関連づけている」として事実上拒否した。韓国外務省当局者も「核実験は国連安全保障理事会決議で禁止されたもので、米韓演習と連動するものではない」と述べ、拒否の姿勢を示した。
 北朝鮮は昨年1月18日~19日、先般亡くなった米国のボズワース元北朝鮮担当特別代表や、デトラニ元朝鮮半島担当大使らとシンガポールで接触した際にも同9日の提案について説明した。李容浩(リ・ヨンホ)外務次官は記者会見で「米韓合同軍事演習を中止すれば核実験を中止する」という提案をしたことを明らかにした。しかし、米国はこの提案を拒否した。
 国際社会はこうした北朝鮮提案の背後にあるもの、彼らの提案が拒否されれば、その逆作業として核実験の準備を進めるとまでは読み切れなかった。

カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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