【ブックハンティング】「華僑華人」をソフトパワーに利用する中国「国家プロジェクト」

 共産党政権による圧政を逃れて海外に脱出したチベット人を「逃亡藏人」と呼び、彼らをも華僑華人と見做し、これまでの「重漢軽少(漢族を重視し少数民族を軽視する)」から「漢少并重(漢族と少数民族を同様に重視する)」へと、華僑華人研究の大転換を打ち出す書である『華僑華人与西南辺疆社会穏定』(石維有/張堅著 社会科学文献出版社 2015年9月)が出版される2カ月前の2015年7月、『華僑華人在中国軟実力建設中的作用研究  RESERCH ON EFFECTS OF OVERSEAS CHINESE IN CHINESE SOFT POWER BUILDING』(謝婷婷/駱克任等著 経済科学出版社)が出版されていた(前書については2016年1月10日「【ブックハンティング】チベット問題を『国内問題』に矮小化する習近平の『新方針』」を参照)。

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執筆者プロフィール
樋泉克夫(ひいずみかつお) 愛知県立大学名誉教授。1947年生れ。香港中文大学新亜研究所、中央大学大学院博士課程を経て、外務省専門調査員として在タイ日本大使館勤務(83―85年、88―92年)。98年から愛知県立大学教授を務め、2011年から2017年4月まで愛知大学教授。『「死体」が語る中国文化』(新潮選書)のほか、華僑・華人論、京劇史に関する著書・論文多数。
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