アフリカの優等生「モザンビーク」に垂れ込める暗雲

 アフリカ大陸の西側に位置するギニア湾に面した赤道ギニアという人口約80万人の小国は、1997年に147.7%という驚異的なGDP(国内総生産)成長率を記録したことがある。その前年の1996年には64.6% 、2000年には95.3%の成長率を記録した。
 常識ではあり得ない高い成長率をもたらしたのは、1990年代に急進展した油田開発だった。石油生産によって、1994年に280ドルに過ぎなかった赤道ギニアの1人当たりGDPは、2012年に2万4462ドルにまで増大した。これは、同じ年の韓国の1人当たりGDP(2万4454ドル)に匹敵する。
 しかし、経済成長と社会開発の進展は別の問題である。世界子供白書(2015年版)によると、2013年の5歳未満の子供の死亡率は、韓国が1000人当たり4人であるのに対し、赤道ギニアは96人に上る。1979年にクーデターで政権掌握したンゲマ大統領の独裁政治の下、石油収入の恩恵は少数の特権層に独占されており、赤道ギニアは今や、天然資源賦存が発展を阻害してしまう「資源の呪い」に蝕まれた典型例とされる国家だ。
 最貧国で資源開発が進むと、しばしば国家のGDP規模を遥かに超える資金が短期間で流入し、国の形が一変する。資源価格が低迷する現在、1990年代後半の赤道ギニアのような急成長を遂げる国は当分出てこないと思われがちだが、アフリカには今後10年以内に資源開発によって爆発的な成長を遂げそうな国がある。沖合で天然ガスの開発が進む南部アフリカのモザンビークである。

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執筆者プロフィール
白戸圭一(しらとけいいち) 立命館大学国際関係学部教授。1970年生れ。立命館大学大学院国際関係研究科修士課程修了。毎日新聞社の外信部、政治部、ヨハネスブルク支局、北米総局(ワシントン)などで勤務した後、三井物産戦略研究所を経て2018年4月より現職。著書に『ルポ 資源大陸アフリカ』(東洋経済新報社、日本ジャーナリスト会議賞受賞)、『日本人のためのアフリカ入門』(ちくま新書)、『ボコ・ハラム イスラーム国を超えた「史上最悪」のテロ組織』(新潮社)など。京都大学アフリカ地域研究資料センター特任教授、三井物産戦略研究所客員研究員を兼任。
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