クリントン候補「敗北」の要因:白人低所得層の「怒り」と「既視感」

執筆者:足立正彦 2016年11月11日
11月9日、米大統領選での敗北を認めたヒラリー・クリントン氏(ニューヨーク)(C)AFP=時事

 11月8日に投票が行われた米国大統領選挙は衝撃的な結果となった。投票直前まで、敗北後にどのような対応を示すのかと敗北を前提とした議論をされていたドナルド・トランプ氏が、大統領選挙人538名の過半数270名を大きく上回る290名を獲得する一方(ミシガン、ニューハンプシャー2州については未確定)、優勢と見られていたヒラリー・クリントン氏の獲得選挙人は228名にとどまり、多くが事前に予想していなかった敗北を喫した。ファーストレディ、上院議員、国務長官の経験が合わせて20年あり、オバマ大統領も含めた過去のいずれの大統領候補よりも豊富な政治経験のあるクリントン候補が、公職経験の全くないトランプ候補に敗れたのである。
 複数の米有力メディアは、今回の結果を「世紀の番狂わせ」とし、68年前の1948年大統領選挙で、直前まで優位と見られていた共和党候補のトーマス・デューイ・ニューヨーク州知事(当時)が、敗北は不可避と見られていた民主党候補の現職ハリー・トルーマン大統領に敗れた例と比較することで、クリントン候補の敗北の衝撃の大きさを伝えていた。
 また、国際社会でも、6月23日にEU(欧州連合)離脱を選択したイギリスの国民投票のような、事前には予想もしなかった出来事は米国では起こるはずがないと見られていた。だが実際に、当選するはずがないと多くが見ていたトランプ氏が当選するという事態が現実となったのである。

カテゴリ: 政治 社会 IT・メディア
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執筆者プロフィール
足立正彦(あだちまさひこ) 住友商事グローバルリサーチ株式会社シニアアナリスト。1965年生まれ。90年、慶應義塾大学法学部卒業後、ハイテク・メーカーで日米経済摩擦案件にかかわる。2000年7月から4年間、米ワシントンDCで米国政治、日米通商問題、米議会動向、日米関係全般を調査・分析。06年4月より、住友商事グローバルリサーチにて、シニアアナリストとして米国大統領選挙、米国内政、日米通商関係、米国の対中東政策などを担当し、17年10月から米州住友商事ワシントン事務所に勤務、20年4月に帰国して現職。
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