風が時間を (11)

まことの弱法師(11)

執筆者:徳岡孝夫 2017年3月12日
タグ: 日本
エリア: 北米 アジア

 これもハワイでの留学準備記の拾遺である。横浜を出た船内で書きホノルルで投函した妻への手紙に、私は船出した晩、「正田さんと2人で仲間にブリッジを教えた」と書いてある。

 推測だが正田氏の勤めている銀行または正田家でブリッジをしていたらしい。

 あれはルールを覚えてしまえば時間の経つのを忘れるが、麻雀の洗牌時のような騒音を伴う解放感がないからか、今日も麻雀に並ぶ人気を得ていない。だが日本にも、ブリッジ愛好者の大集団が戦前から存在した。帝国海軍である。

 四角いテーブルの四辺に4人のプレイヤーが坐る。対面はあなたのパートナー、両側は敵である。4人は配られた札を開き、各自の手によって獲得可能な手の数を宣言する。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
徳岡孝夫(とくおかたかお) 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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