風が時間を
風が時間を(29)

まことの弱法師(29)

執筆者:徳岡孝夫 2018年9月8日
エリア: 北米 日本

「北野中学に転入学ですか、それはちょっと……」校長は即答を避けた。入るのさえ難しい北野(学制改革で北野高校になっていた)に途中から入りたいというのがまず無理である。だが祖母は「見どころのある子です。なんとかなりませんか」と押した。校長は「うーん、ひとつだけ道がある。北野高校の定時制に入ることです。全日制と同じ先生が教えているのだし、大学入試にも強いです」

 こうして磯村君は生野区の無名の中学から北野高校に移り、大阪市大へと進んだと思う。だとしたら私は全日制、磯村君は定時制だが、祖母は頓着しなかった。もちろん彼がやがて大阪市長になるとは当時誰も想像しなかった。

フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
この記事をSNSにシェアする
執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
クローズアップ
comment:2
icon
  • 記事の閲覧、コメントの投稿には、会員登録が必要になります。
フォーサイトのお申し込み
クローズアップ
  • 24時間
  • 1週間
  • f
  • 最新コメント
  • 最新トピック
  • 新着
  • 高評価
  • コメント数順
back to top