世界漫遊「食考学」の旅 (12)

【ラオス・ジャール平原】元大本営参謀「辻政信」の足跡ともち米「カオニャオ」

執筆者:野嶋剛 2019年1月11日
エリア: アジア
メコンを眺めながらラオビール、がラオスの定番!(筆者撮影、以下同)

 

 逃亡者が自らを描いた逃亡記で傑作に出会う機会は滅多にない。だが、旧大日本帝国陸軍の「元大本営参謀」である辻政信(1902~68)が、1950年に自らの逃亡劇を記した著書『潜行三千里』は、抜群に面白い。何しろ描写が細かい。そして、ドラマチックだ。参謀としての能力には疑問符もつく人物だが、物書きとしては天性の才能を持っている。

旅のおともとなった辻の『潜行三千里』

 ノモンハン事件、マレー半島攻略戦などを立案した辻を知らない人も、今の時代は多いだろう。辻は終戦を迎えたとき、戦犯逮捕を回避するためにバンコクから逃げ出し、ほとぼりが冷めてから日本に帰ってこの『潜行三千里』を著した。それが一発逆転のベストセラーとなり、一躍有名人、衆議院議員から参議院議員にもなった。

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執筆者プロフィール
野嶋剛(のじまつよし) 1968年生れ。ジャーナリスト。上智大学新聞学科卒。大学在学中に香港中文大学に留学。92年朝日新聞社入社後、佐賀支局、中国・アモイ大学留学、西部社会部を経て、シンガポール支局長や台北支局長として中国や台湾、アジア関連の報道に携わる。2016年4月からフリーに。著書に『イラク戦争従軍記』(朝日新聞社)、『ふたつの故宮博物院』(新潮選書)、『謎の名画・清明上河図』(勉誠出版)、『銀輪の巨人ジャイアント』(東洋経済新報社)、『ラスト・バタリオン 蒋介石と日本軍人たち』(講談社)、『認識・TAIWAN・電影 映画で知る台湾』(明石書店)、『台湾とは何か』(ちくま新書)、『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』(小学館)、『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』(扶桑社新書)など。訳書に『チャイニーズ・ライフ』(明石書店)。最新刊は『香港とは何か』(ちくま新書)。公式HPは https://nojimatsuyoshi.com
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