風が時間を
風が時間を(34)

まことの弱法師(34)

執筆者:徳岡孝夫 2019年3月24日
エリア: 北米 日本

 室友ロスを介してペンシルベニア出身のトム・ハスケルとも仲良くなった。ロスにはない、少しシニカルなところのある男だった。そのうえ中古車を持っていたので私たちの行動範囲は広まった。

 夕食をする店を探して3人で出かける。市立墓地の前を通りかかるとトムが「この子らに子孫を与えたまえ」と言う。「それなに」と聞くとトムは「図書館でキスしていたヤツらがいるだろう。あれが大学院に進むと墓地に来るようになるんだ」と説明した。なるほど、暗闇の墓地駐車場に赤い尾灯が点々と見える。墓地の駐車場なら誰に邪魔されることなくラブシーンの続きをやれるのだ。そして、その性欲から子や孫が生まれるというわけである。

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執筆者プロフィール
徳岡孝夫 1930年大阪府生れ。京都大学文学部卒。毎日新聞社に入り、大阪本社社会部、サンデー毎日、英文毎日記者を務める。ベトナム戦争中には東南アジア特派員。1985年、学芸部編集委員を最後に退社、フリーに。主著に『五衰の人―三島由紀夫私記―』(第10回新潮学芸賞受賞)、『妻の肖像』『「民主主義」を疑え!』。訳書に、A・トフラー『第三の波』、D・キーン『日本文学史』など。86年に菊池寛賞受賞。
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