
撮影年不詳ながら、義江との離婚、独り立ちを決意した頃のあき(自伝『ひとり生きる』(ダヴィッド社、1956年)より)
節分立春と駆けぬけるように過ぎていったが、春まだ遠し。
通勤のコートの下に職業婦人らしく格子のジャケットにタイトスカート、ヒールの少しある黒い革靴を合わせる。
短く切られたヘアーにはパーマネントがあてられ、資生堂のコールドクリームで入念にマッサージした肌にはツヤのある粉をはたき、細く整えた眉を弓なりに描き、薄い色の紅で口元を丁寧に仕上げる。これがあきの通勤スタイルだ。

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