あきの出馬した参議院議員選挙当日、昭和37(1962)年7月1日、日曜日の夜9時過ぎのことだった。
有権者の6割以上が投票に出かけた日の晩は、昼間に反してことのほか静かで、厚い雲に蓋をされた地上は陽が落ちても蒸し暑かった。
藤山愛一郎経済企画庁長官は首相官邸を訪れ、対応した大平正芳官房長官に、たった今辞表を提出してきたところだ。
永田町から私邸の白金台に戻る道すがら、車の後部座席に深く座る藤山はとぎれとぎれの店のネオンを見すごしながら、明日から始まる平日の1週間を想像し「正念場だ」とつぶやきながらこぶしをにぎった。
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