「海警法」が押し広げる中国の“海洋国土”
「第1列島線」の内と外で“二つの軍事力”を使い分ける狙い

執筆者:山本勝也 2021年4月14日
カテゴリ: 軍事・防衛
エリア: アジア
中国海警の大型船(写真提供・海上保安庁)
 
2021年2月から施行された中国の「海警法」。海上法執行機関である中国海警に、外国軍艦に対する武器使用権限を付与するなど、国際法との整合性の観点から問題視される条文が多い。また、海警の「管轄海域」に関する規定も曖昧であり、そこには日本など他国の領海やEEZまで含まれる可能性がある。はたして、国際紛争の火種になりかねない法律を制定した中国の思惑とは――。海上自衛隊随一の中国通が、かの国独特の国際法解釈と海洋戦略を読み解く。

 

国際社会と相容れない中国の“海洋国土”概念

 21世紀に入り、中国社会では「藍色国土(青い国土)」という用語をよく目にするようになってきた。この新たな中国語は、それ自体はとても色鮮やかで美しい響きを醸し出している。しかし、その意味するところは、国際社会共有の海洋を中国の独占物であると考える、我々国際社会の既存の価値観とは相容れない概念である。

 現代国際社会では、海洋は広く人類全体の公共財として理解されている。そのため、一国の主権の下にある領海も、その国の平和や秩序、安全を害さない限りにおいて、第三国の軍艦も自由に通航することが認められている。この点において基本的に他の干渉を許さない領土や領空と異なり、領海は沿岸国の主権といえども一定の制限を受けている。

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執筆者プロフィール
山本勝也 防衛研究所教育部長。一等海佐。防衛大学校卒業。中国人民解放軍国防大学修了、政策研究大学院大学(修士)。護衛艦しらゆき艦長、在中華人民共和国防衛駐在官、統合幕僚監部防衛交流班長、海上自衛隊幹部学校戦略研究室長、アメリカ海軍大学連絡官兼教授、統合幕僚学校第1教官室長等を経て、現職。海洋安全保障、中国の軍事戦略が専門。
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