円安・賃金抑制「安いニッポン」が「バラマキ」を支える不幸な均衡のメカニズム

執筆者:滝田洋一 2021年10月27日
新型コロナ対策10万円給付は家計の貯蓄に回された  ©︎時事
日本政府の借金を民間(企業と家計と金融機関)の黒字が埋める限り、財政破綻は起こらない。そして民間の黒字は賃金抑制や円安によって維持された。だが、まさにその構図が「日本の30歳代IT人材の年収はアメリカの半額以下」という状況を生み、一方で企業競争力は上がっていない。世界的な低インフレが終焉すれば、政府の借金が膨らむペースもアップする。「非常時なのでまず現金給付を」と安易に口にする政治家たちは、「安いニッポン」が「バラマキ」を可能にしているこの不幸な均衡を議論せよ。

 折からの衆院選を控えてのことだったからでもあろう。矢野康治財務事務次官が『文藝春秋』11月号(10月8日発売)に寄せた論考が話題を呼んでいる。「このままでは国家財政は破綻する」。その副題がメディアで大きく取り上げられ、「バラマキ」が人口に膾炙するようになった時点で、矢野氏は問題提起に成功したというべきだろう。

 確かに選挙戦では与野党が給付金の額を競い合っている。与党側では公明党が「0歳から高校3年生までの全ての子どもに1人当たり一律10万円相当の支援」を主張。野党側では立憲民主党が「住民税非課税世帯など低所得者に年12万円を現金給付」、共産党が「1人10万円を基本に給付金を支給。年収1000万円未満程度含め対象に」と主張している。

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カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
滝田洋一 1957年千葉県生れ。日本経済新聞社編集委員。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」解説キャスター。慶應義塾大学大学院法学研究科修士課程修了後、1981年日本経済新聞社入社。金融部、チューリヒ支局、経済部編集委員、米州総局編集委員などを経て現職。リーマン・ショックに伴う世界金融危機の報道で2008年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。複雑な世界経済、金融マーケットを平易な言葉で分かりやすく解説・分析、大胆な予想も。近著に『世界経済大乱』『世界経済 チキンゲームの罠』『コロナクライシス』など。
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