ロシアの核兵器使用をいかに抑止するかーー問われる米国とNATOの真価

執筆者:鶴岡路人 2022年10月13日
エリア: ヨーロッパ
核抑止の基本は報復の警告。米国とNATOは正念場を迎えている[10月10日、ビデオ会議形式で安全保障理事会を行うプーチン大統領](C) EPA=時事 / GAVRIIL GRIGOROV / SPUTNIK / KREMLIN POOL
ロシアの核兵器使用は、本質的にはウクライナがコントロールできる問題とは言えない。米国・NATO-ロシア間の核抑止がすべての鍵を握っている。米国はサリヴァン大統領補佐官やブリンケン国務長官を通じて「破滅的な結果」の警告を伝えてきたと公表したが、その「警告の信憑性」をいかに確保するかが問われる局面を迎えている。

 ロシアが核兵器を使うのではないかとの懸念が注目を集めている。ロシア軍がウクライナで劣勢になるなか、形勢逆転、あるいは自国に有利な条件をウクライナに押し付けることを狙って核兵器の使用に踏み切るのではないかというのである。

 この問題が一気に注目されるとともに、危機を煽るような言説も増えている。そこで以下では、米国およびNATO(北大西洋条約機構)とロシアとの間の核抑止という観点から、どのようなときに核兵器が使われてしまうのか、いかなる使用が考えられるのか、そしてそれを避けるためには何が必要なのかなどを、順に検討していきたい。

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
鶴岡路人(つるおかみちと) 慶應義塾大学総合政策学部准教授、戦略構想センター・副センタ―長 1975年東京生まれ。専門は現代欧州政治、国際安全保障など。慶應義塾大学法学部卒業後、同大学院法学研究科、米ジョージタウン大学を経て、英ロンドン大学キングス・カレッジで博士号取得(PhD in War Studies)。在ベルギー日本大使館専門調査員(NATO担当)、米ジャーマン・マーシャル基金(GMF)研究員、防衛省防衛研究所主任研究官、防衛省防衛政策局国際政策課部員、英王立防衛・安全保障研究所(RUSI)訪問研究員などを歴任。著書に『EU離脱――イギリスとヨーロッパの地殻変動』(ちくま新書、2020年)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(新潮選書、2023年)など。
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