日本の原発が攻撃される日――「航空機テロ」で思考停止するリスクを直視せよ

執筆者:火箱芳文 2022年11月18日
エリア: その他
ウクライナのザポリージャ原発を占拠したロシア兵 ©EPA=時事
東日本大震災における原子力発電所の事故は、日本社会にとって「想定外」だったとされる。原発が軍事目標になり得ることがウクライナで示された現在、自然災害“以外”の脅威を「想定外」に置き続けることは許されない。震災当時の陸上幕僚長は、自衛隊による原発防護の必要性を説く。

 

 ロシアがウクライナに侵攻して8カ月以上が経った。この戦争で懸念されている事態のひとつが、ロシアによる原子力発電所への攻撃である。ロシアは3月、ウクライナ南部への侵攻に併せてヨーロッパ最大級の南東部のザポリージャ原発を攻撃し、掌握した。稼働中の原発が攻撃を受けるのは史上初めてであり、8月下旬には同原発に対する砲撃で施設の屋根が損傷する等の被害が出た。

 この事態を憂慮したIAEA(国際原子力機関)のラファエル・グロッシ事務局長以下の調査団が入り調査を開始したが、原発への攻撃を止めるまでには至っていない。また9月にも、南部ミコライウの南ウクライナ原発の周辺でミサイル攻撃があった。原発への攻撃は明白なジュネーブ条約違反であるが、専制主義者にとって条約など紙切れに過ぎない。原発が攻撃され破壊された場合、放射性物質の拡散が起こり、隣国等広い地域に深刻な影響が出ることを改めて認識しておく必要がある。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
火箱芳文(ひばこよしふみ) 元陸上幕僚長。1974年(S.49)防衛大学校(18期生)を卒業、同年陸上自衛隊に入隊、普通科(歩兵)幹部として那覇第1混成群勤務を皮切りに、第1空挺団中隊長(習志野)、第3普通科連隊長(名寄)等の指揮官、陸上幕僚監部・方面総監部等の幕僚、学校教官等を務める。空挺基本降下課程、富士幹部レンジャー課程、陸上自衛隊幹部学校指揮幕僚課程、統合幕僚学校一般課程を修了。99年陸将補に昇任、第1空挺団長(習志野)、北部方面総監部幕僚長。05年に陸将に昇任、第10師団長(名古屋)、防衛大学校幹事(副校長)(横須賀)、中部方面総監(伊丹)を経て、09年3月第32代陸上幕僚長。同職を最後に11年8月退官、三菱重工業(株)顧問、(公財)国家基本問題研究所理事、(公財)偕行社理事、(公財)全日本柔道連盟特別顧問、(般社)日本戦略研究フォーラム顧問などを務める。
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top