中国にとって「渡りに船」のブラジル・アルゼンチン「共通通貨構想」

執筆者:西濵徹 2023年2月17日
タグ: ブラジル
エリア: 中南米
共通通貨構想を発表したブラジルのルラ大統領(左)とアルゼンチンのフェルナンデス大統領(右)(C)AFP=時事
 
ブラジルとアルゼンチンが二国間貿易決済用の共通通貨を創設すると発表した。いずれは域内関税同盟メルコスル(南米南部共同市場)や米大陸33カ国が加盟するCELAC(ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体)にも拡大する可能性も意図している模様だ。仮に共通通貨が通貨バスケット制を採用し、そのなかに人民元が組み入れられれば、中国にとっては中南米で一段と存在感を高める好機となりそうだ。

 ここ数年、中南米地域では「ピンクの潮流」とも呼ばれる動きが広がりをみせており、数多くの国において左派政権が誕生している。今年1月には域内最大の経済規模を誇るブラジルにおいて、ルラ・ダ・シルヴァ氏が12年ぶりに大統領への返り咲きを果たし、約6年半ぶりに左派政権が誕生した。中南米は元々「米国の裏庭」と称されるなど米国の影響力が強い地域とされるものの、左派政権の誕生をきっかけに米国と距離を置く国が広がりをみせている。

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
西濵徹(にしはまとおる) 第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト。一橋大学経済学部卒業後、国際協力銀行(JBIC)でアジア地域向け円借款業務などを担当。2008年より第一生命経済研究所、2015年より現職。アジアを中心とする新興国のマクロ経済及び政治情勢分析を担当。著書に『ASEANは日本経済をどう変えるのか』(NHK新書/2014年)などがある。
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