イラン「革命防衛隊の強大化」で遠のく核合意再建

執筆者:青木健太 2023年3月1日
タグ: イラン
エリア: 中東
テヘランで行われた軍事パレードで敬礼するイランの革命防衛隊=イラン大統領府が2019年9月に提供(C)AFP=時事
 
 
米イランの核合意再建に向けた交渉が膠着状態に陥る中、イランがウラン濃縮度を84%に引き上げた可能性があると報じられた。イラクとオマーンの仲介による交渉の再開が模索されているが、ボトルネックになるのが革命防衛隊だ。体制の革命防衛隊への依存度が高まる一方、ロシアへのドローン供与疑惑は革命防衛隊と外務省の対立も示唆している。

 イランでは2022年9月以来続く反体制¹抗議デモが長期化し、アリー・ハーメネイー最高指導者の健康不安説も伝えられている。対外関係に目を向けても、ロシアへのドローン供与疑惑を巡って欧米との軋轢が深まっており、核交渉も膠着状態にある。2023年2月14~16日のエビラーヒム・ライーシー大統領の中国公式訪問は、イランが中露との接近を図る「ルック・イースト」政策を推進していることを広く印象づけた。

 イランを取り巻く状況が厳しさを増す状況下、2023年2月19日付「ブルームバーグ」は、イランがウラン濃縮を84%に引き上げた可能性を伝え² 、これに対し、現在イスラエルがイランの核兵器保有への警戒を高めている。アメリカのジョー・バイデン大統領は選挙公約でイラン核合意再建を掲げたが、ロシア・ウクライナ戦争への対応に追われる中、任期中に達成することはできるだろうか。

 本稿では、イランの内外政の現在地を素描した後、革命防衛隊をめぐる諸問題に着目しつつ、核合意のゆくえを占いたい。

国内でのヒジャーブを巡る抗議デモの推移

 2022年9月16日、女性の服装の取り締まりを担う風紀警察と呼ばれる組織によって拘束されていたクルド人女性のマフサー・アミーニーが、搬送先の病院で死亡した。当局は既往症によるものと説明したが、風紀警察による暴力的な「指導」が原因だと憤る国民らが抗議デモを開始し……

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カテゴリ: 政治 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
青木健太(あおきけんた) 公益財団法人中東調査会研究主幹。1979年東京生まれ。上智大学卒業、英ブラッドフォード大学平和学部修士課程修了。アフガニスタン政府地方復興開発省アドバイザー、在アフガニスタン日本国大使館二等書記官、外務省国際情報統括官組織専門分析員、お茶の水女子大学講師などを経て、2019年より中東調査会研究員、2023年4月より現職。専門は、現代アフガニスタン、およびイランの政治・安全保障。著作に『タリバン台頭──混迷のアフガニスタン現代史』(岩波書店、2022年)、『アフガニスタンの素顔──「文明の十字路」の肖像』(光文社、2023年)、「イラン「抵抗の枢軸」の具体的様態──革命防衛隊と「抵抗の枢軸」諸派との関係性を中心に」(『中東研究』550号、2024年5月)他。
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