丸見え筒抜けは「TikTok」だけに限らない――「中国製アプリ」本当の怖さ

執筆者:山崎文明 2023年3月28日
エリア: アジア
「TikTok」の周受資CEOが米議会下院エネルギー・商業委員会の公聴会で初の議会証言に臨んだことを受け、ケビン・マーチャーシー下院議長(写真)は、議会がTikTokを規制する超党派の法案を可決すると考えており、周CEOの証言を「懸念している」と述べた[3月24日、ワシントンDC](C)EPA=時事
米議会で動画共有アプリ「TikTok」を禁止する動きが広がっている。カナダや欧州も足並みを揃える。警戒の背景にあるのは、中国のすべての国民と組織に国の情報活動に協力する義務を定めた「中国国家情報法」の存在だ。そして、「荒野行動」「原神」「放置少女」といった人気の中国製ゲームアプリもまた、実は同じリスクを孕んでいる。

 3月1日、米国下院議会の外交委員会は動画共有サービス「TikTok」の一般利用を禁止する法案を可決した。この後、上下両院本会議で可決し、ジョー・バイデン大統領が署名を行えば、米国国内での「TikTok」の使用ができなくなる。

「TikTok」は、中国のバイトダンス(ByteDance)が開発・運営する人気の動画共有アプリで、2018年から本格的にサービスを開始。ダウンロード数は2021年1月時点で35億回を超え、2021年9月には、全世界で利用者数が10億人を超えたと発表されている。2023年1月時点で、米国でのユーザー数が、全世界最多の1億5000万人という巨大なアプリが禁止されようとしているのだ。

個人情報が筒抜けに

 米国は、国民の個人データが「TikTok」を通じ中国へ漏洩することを警戒している。政府レベルでは、米国をはじめカナダやEU(欧州連合)ではすでに業務用端末での使用を禁じているし、私用のPCからも「TikTok」を削除することが強く求められていた。

 個人情報の流出問題については、2020年7月23日、プロトンというスイスに本社をおくセキュリティ会社がブログで詳細に報じている。「TikTok」のアカウントを開設するには、電話番号またはメールアドレスと生年月日の入力が必要だ。アカウントを作成するとユーザーは、ソーシャルメディアアカウント(Twitter、Instagram、Facebookなど)、携帯電話の連絡先リスト、GPSデータへのアクセス許可が求められる。

 ここまでの情報だけでも個人の特定には十分だが、……

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カテゴリ: IT・メディア 政治
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執筆者プロフィール
山崎文明(やまさきふみあき) 情報安全保障研究所 首席研究員 1955年、大阪府生まれ。78年神戸大学海事科学部卒業。損害保険会社を経て83年に米国際監査会社プライスウォーターハウス公認会計士共同事務所入所、システム監査部マネジャーとして大手ITメーカーや大手通信キャリアのセキュリティー監査を担当する。以来、複数のシステムコンサルティング会社、セキュリティーコンサルティング会社で現場経験を積む。リサーチ活動においては、「自分の目で事実確認」することを信条に、当事者や関係者に直接取材。著書に『2023年 台湾封鎖』(宝島社/共著)、『情報立国・日本の戦争 大国の暗闘、テロリストの陰謀』(角川新書)などがある。
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