少子高齢化する中国、「低齢老年」の過酷な現実

執筆者:中澤穣 2023年4月11日
タグ: 中国 習近平
エリア: アジア
北京の公園で青空麻雀を楽しむ高齢者。こうした老後の生活も夢物語になるのか (C)EPA=時事
人口が減少に転じ、「銀髪紅利(シルバーボーナス)」と称して高齢者の就労を促進し始めた中国だが、労災や医療など社会保障制度の立ち遅れが大きな課題になっている。政府による定年退職年齢引き上げが反発を呼ぶ一方で、経済的な理由から年齢を偽ってでも働き続けるしかない人々も増えているのが「未富先老」社会の現実だ。

 日本で「後期高齢者」という言葉が批判を浴びたのは、すでに15年も前になる。中国では全国人民代表大会(全人代)を間近に控えていた2月、「低齢老年」という言葉がバッシングを受けた。「低齢老年」に明確な定義はないとみられるが、65~74歳を指す日本の前期高齢者よりも少し年齢が下がり、60歳から60代半ばすぎくらいのイメージのようだ。

60歳以上には認められない労災

 この言葉が話題となったのは、2月20日前後にほぼ同じタイミングで報じられた浙江省寧波市で起きた悲劇と、中国紙『工人日報』の評論記事がきっかけだった。……

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執筆者プロフィール
中澤穣(なかざわみのる) 1977年生まれ。東京新聞外報部デスク。早稲田大学政治経済学部卒、一橋大学言語社会研究科修了。東京新聞社会部(司法担当)や中国総局長などを経て現職。
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